糖尿病を治療せずに
放置していませんか?
糖尿病は生活習慣の変化などによって増加傾向が続いています。現在の日本では糖尿病の予備軍まで含めた罹患者数はおよそ2000万人と考えられています。
糖尿病は内臓脂肪型肥満や肥満などによりインスリンをうまく利用できなくなっているタイプが多いですが、その他にもインスリンがうまく産生できない、利用効率が悪いといった体質によって、生活習慣の乱れがなく、運動も適度に行っている痩せ型タイプの人が発症するケースもあります。また、血糖値も常に血糖値が高めの方、食後の血糖値スパイクが激しい方、一日での血糖値の変動が激しい方など様々です。
いずれのタイプであっても、血糖値の異常があることで血管への負担が大きくなり、高血糖から低血糖への変動によって意識障害などを起こしてしまうこともありますので、糖尿病を放置しておくことは大変危険です。
当院では内科的な側面、循環器内科的な側面の双方から、患者様にあわせた血糖値のコントロールを行っています。血糖値でお困りの方はいつでもご相談ください。
このような症状はある方は
当院までご相談ください
- 治療を行っているが血液検査の数値がだんだんと悪化してきている
- 血液検査で血糖値の異常を指摘された
- 現在服薬による血糖値コントロールを行っているが、副作用や低血糖などが心配
- 現在のところ血糖値などに問題はないと言われているが、生活習慣などから糖尿病が心配
- インスリン治療を勧められたが、内服治療で治療を続けたいと思っている
- 積極的にインスリン治療などを取り入れたいと考えている
糖尿病とは
炭水化物や砂糖など食事によって摂取した糖質は消化吸収されてブドウ糖に変化し、血液と共に運ばれ、細胞で利用され余ったブドウ糖は肝臓や筋肉などに蓄積されます。この働きをコントロールしているのが、膵臓で産生されるインスリンで、細胞がうまくブドウ糖を取り込む役割を果たして、食後一時的に上昇した血糖値をすみやかに下げる働きをしています。このインスリンが産生されなくなることや、産生されていてもうまく利用することができなくなり、血糖値がコントロールできなくなった状態が糖尿病です。
細胞がブドウ糖を利用できなくなると、ブドウ糖が血液中に溢れ、血液がドロドロの状態になってしまいます。血管に大きな負担をかけることで、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害という三大合併症をはじめとした様々な合併症を起こします。
糖尿病は重篤な合併症が起こらない限り自覚症状の無い疾患ですが、放置してしまうと生命にかかわる重篤な合併症を起こしてしまうこともあります。健康診断などの際の血糖値やHbA1cで数値の異常を指摘されたら、お早めに当院までご相談ください。
糖尿病のタイプ
1型糖尿病
1型糖尿病は膵臓でインスリンを分泌するβ細胞という細胞が障害されて、インスリンが分泌できなくなっている状態です。多くの場合は自己免疫によって細胞が攻撃されてしまうことが原因となります。発症が小児期に多いことから「若年型糖尿病」と呼ばれることもありますが、必ずしも小児期だけに限らず成人してからも発症するケースがあります。
1型糖尿病は北欧での発症数が多い傾向がありますが、日本での小児期の発症は10万人に1.5人程度と報告されています。
2型糖尿病
2型糖尿病は食事習慣、運動習慣などの乱れやストレスなどに遺伝的要因が加わって起こる生活習慣病です。それらの原因によって、インスリン分泌の低下や細胞とインスリンの連携がうまくいかなくなる(インスリン抵抗性)ことで、血糖値のコントロールがうまく働かなくなり、高血糖の状態になります。
多くは40歳以上の中年期になって発症しますが、近年では若い世代でも2型糖尿病の発症がみられるようになってきましたので注意が必要です。
糖尿病は一度発症すると完治することはできませんが、早期に発見し食事療法や運動療法による生活習慣の改善を行うことで、薬物療法を行わずに血糖値をコントロールすることが可能です。
2型糖尿病の発症リスクが高い方
- 運動習慣がない
- 外食ばかりしている
- 早食いしている・食べすぎでしまう
- 肥満
- 毎日お酒を飲む、お酒の量が多い
- ストレスが多い
- ほとんど歩かない
- 家族や親族で糖尿病になった人がいる
- 家族や親族で、脳血管障害や心筋梗塞・狭心症などの心疾患になった人がいる
早期の受診が必要な症状
糖尿病はほとんど自覚症状がなく、進行後に合併症を発症し初めて気付くことも多いです。以下のような症状があらわれたら、速やかに当院までご相談ください。
- 異常なほどののどの渇き(口渇)
- 水や飲み物を飲むことが多くなった
- 食事をきちんと摂っているのに、2~3時間たつとお腹が空いてしまう
- しっかりと食事を摂っているのに体重が減少してきた
- 尿の回数が増え、量も多い
- 就寝中に尿意で目覚める
- いつも疲れていてだるい
- 足のつま先などにしびれがある、よく足首などがむくむ
- 息切れがする
- 少し歩くとつらくて休んでしまう
- 目の前に靄がかかったようにかすむ、視野が狭くなった
- 視力が急激に衰えてきた
その他のタイプ
糖尿病は主に1型、2型に分類されますが、その他にも遺伝子の異常によってインスリンの分泌に問題が起こるもの、肝臓病など外的な要因によるもの、薬物の副作用といった様々な原因から起こる糖尿病もあります。
妊娠糖尿病
妊娠中は胎盤の働きによってインスリンの作用が低下することがあります。これにより糖尿病を発症した、または妊娠中にはじめて糖尿病が見つかった場合を妊娠糖尿病と呼びます。しっかりと血糖コントロールをしなければ、胎児に影響があることもありますので注意が必要です。
お母さん
- 羊水過多になりやすい
- 出産時に胎児の肩が引っかかってしまう肩甲難産を起こしやすい
- 高血圧を起こしやすい(妊娠高血圧症候群)
- 網膜症や腎症などを発症したり、悪化したりする
赤ちゃん
- 形態異常をおこしやすい
- 帝王切開や肩甲難産につながる巨大児になりやすい
- 流産しやすい
- 新生児低血糖となる
- 新生児多血症を起こしやすい
- 心臓肥大などの臓器異常を起こすことがある
- 電解質異常になりやすい
- 黄疸を起こす
- 胎児死亡 など
基本的には食事療法、運動療法でコントロールを行いますが、状態によってはインスリン療法が検討されます。
担当の産婦人科医としっかりと連携した上で、生活習慣の改善によるコントロールやインスリン療法を行うことが重要です。
糖尿病の診断
血糖値
血糖値とは、一定量の血液の中にどの程度のブドウ糖が含まれているかを計測した数値です。通常は1dL中に何mgのブドウ糖が含まれているかを○○mg/dLという単位であらわします。
血糖値が最も低くなる空腹時に計測する空腹時血糖値と、食事に関係なく計測する随時血糖値があり、正確な診断には直前の食事から10時間以上絶食して血液検査を行います。なお、血糖値による診断は以下の規準で行います。
空腹時血糖値 | 随時血糖値 | |
糖尿病型 | 126mg/dL | 200mg/dL |
境界型 | 110~126mg/dL未満 | 140~200mg/dL未満 |
正常高値 | 100~110mg/dL未満 | - |
正常型 | 100mg/dL未満 | 140mg/dL未満 |
75gOGTT
OGTTは英語のOral Glucose Tolerance Testの頭文字を取ったもので、日本語では「ブドウ糖負荷試験」と言います。空腹時に75gのブドウ糖を摂取し、30分、60分、120分経過時にそれぞれ血液を採取して血糖値を測ります。2時間経過時の測定値が200mg/dL以上の場合は糖尿病と診断される一つの基準です。
HbA1c
ヘモグロビンはブドウ糖と結びつきやすい性質をもっています。また、一度ブドウ糖と結びついたヘモグロビンはヘモグロビン自体の寿命がつきるまでブドウ糖を分離することがありません。この性質を利用して、血液中のブドウ糖と結びついたヘモグロビン(HbA1c)の量を%で表すことによって当日の食事などに影響されずに1~2か月間の平均的な血糖値を推定することができます。HbA1cが6.5%以上の場合は糖尿病型と診断されます。また糖尿病罹患者の場合、7.0%以下に保つことが合併症コントロールの基準とされています。
糖尿病の診断値
- 随時血糖値が200mg/dL以上であるか、空腹時血糖値が126mg/dL以上である
- 75gOGTTの2時間値が200mg/dL以上である
- HbA1cの測定値が6.5%以上である
以上の1.~3.のいずれかに当てはまる場合が糖尿病型とされ、1.と2.のどちらかに当てはまり、3.が同時に当てはまる場合、「糖尿病」と診断されます。
抗GAD抗体、インスリン分泌能・インスリン抵抗指数
糖尿病の病態を調べ、その後の治療方針を決定します。そのため、初診時には精密な血液検査を行います。
血液検査で自己免疫の要素である抗GAD抗体が見つかった場合、1型糖尿病であることがわかります。
一方、2型糖尿病の場合は空腹時に採血を行い、インスリンやCペプチドの濃度を調べることで、インスリン分泌能やインスリン抵抗指数を算出します。
糖尿病の治療
治療方法は1型と2型で大きく異なりますが、基本的な目的は血糖値を正常な状態に保ち、合併症を起こさないようにすることです。1型糖尿病の場合は、インスリンの産生能力がありませんので、基本的に自己注射によるインスリン補充療法が必須となります。
一方、2型糖尿病の場合は食事療法、運動療法といった生活習慣の改善を行います。数か月こうした治療を試み、十分な効果が得られない場合は血糖値を下げる薬を使用した薬物療法を行います。薬物には様々なタイプがありますので、患者様の状態に合わせて処方を行います。
また、血糖値やHbA1cの状態によって最初から薬物療法を選択することもあります。その際も必ず、生活習慣の改善を併せて行っていくことが重要です。
食事療法
一般的な食事療法は完全に糖質を禁止するのではなく、たんぱく質、脂質、炭水化物(糖質)、ビタミン、ミネラル、食物繊維などのバランスを考えた食事を摂ることが重要です。またこれから活動が始まる朝や昼には糖質も含めしっかりと食べ、就寝するだけの夕食は炭水化物などを押さえて、軽めの食事にするなどの工夫も大切です。またカロリーオーバーによる肥満も糖尿病の悪化要因の一つとなりますので、腹八分目程度におさえることも大切です。
運動療法
運動によって細胞がインスリンを利用しやすくなり、食後に血糖値が高止まりする状態を抑えることができます。
効果的なのは有酸素運動です。有酸素運動にはジョギング、ウォーキング、水中歩行などがありますのでご自身に合った続けやすいものを選んで実行してください。
また、無酸素運動も重要になりますが、準備のいらないスクワットなどがおすすめです。
運動療法は継続することが大切です。無理なくできる運動を軽く汗ばむ程度からはじめて、身体が慣れてきたらだんだん増やしていき、少し厳しくなったらまた負荷を減らして軽いところから始め直すといった工夫も大切です。
薬物療法
食事療法や運動療法を続けてもなかなか効果が得られない場合や、血糖値の状態が悪いようなケースでは薬物療法を行います。
1型糖尿病の場合はインスリン療法を選択しますが、2型糖尿病の場合は血糖値を下げる薬やインスリンの分泌を促進する薬などがあり、患者様それぞれの状態に合わせて処方していきます。
それらで効果が得られない場合には、インスリンやGLP-1受容体作動薬などの自己注射を検討することもあります。