その症状は本当に
風邪でしょうか?
日本は医療機関へ受診しやすく、多くの人が風邪や他の疾患の初期段階で受診しています。しかし、まだ症状がはっきりしていない軽い症状で受診されることもあり、その中には重大な疾患が隠れている可能性もあります。特に風邪のような症状が現れるものの風邪ではない疾患を見分けることは難しく、このページでは風邪っぽい症状と他の疾患の見分け方について紹介します。
風邪は通常、自然に治るウイルス感染症で、喉の痛み、鼻水、咳など多くの上気道感染症状を引き起こします。風邪(ウイルス性の上気道感染)は多くの症状が同時に現れる特徴がありますが、細菌感染の場合は原則的に1つの臓器に1つの菌が感染するため、多くの症状が現れることは少ないとされています。風邪かどうかを見極める際には、これらの特徴に注目すると良いでしょう。
現れる症状と疑われる疾患
風邪の場合
主な症状として喉の痛み、鼻水、咳が急に同程度で現れる場合は典型的な「風邪」を疑います。風邪による喉の痛みは、飲み込む際に感じる嚥下時痛が特徴です。嚥下時痛がなく、咳をしたときにのみ喉が痛む場合は、喉の感染ではなく気管支や肺の感染を疑います。痰が絡む場合は、それが気管支から出ているか、鼻水が喉に流れ込んでいるか(後鼻漏)を考えることができます。飲み込みたくなる感覚があれば、気管支からの痰よりも後鼻漏の可能性が高いかもしれません。
主に鼻の症状がみられる場合
鼻水・鼻詰まりなどの鼻の症状が強く現れる場合は、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎を疑います。
アレルギー性鼻炎
朝方にくしゃみや鼻水がある、季節性の症状があるなどの特徴があればアレルギー性鼻炎の可能性が高まります。
副鼻腔炎
細菌性とウイルス性があり、細菌性副鼻腔炎の場合は抗菌薬での治療が必要です。鼻炎症状が1週間以上続き、片側の頬に強い痛みや腫れがある、熱が続く場合は細菌性副鼻腔炎を疑います。また、初めは鼻水や微熱があり、一時的に改善したものの数日後に膿性の鼻汁が出て熱が再発した場合は細菌性副鼻腔炎を疑います。
主に喉の痛みの症状がみられる場合
特に喉の症状が強く現れており、喉が痛いと感じる場合、唾を飲み込むと痛む「嚥下時痛」があるかどうかを確認することが重要です。嚥下時痛がない場合は、咽頭炎(喉の炎症)ではない可能性があります。
咽頭炎
溶連菌は咽頭炎を起こす代表的な原因です。溶連菌性の咽頭炎を判断するために、Centorの診断基準があります。
Centorの診断基準
38℃以上の発熱がある | +1点 |
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首のリンパ節が腫れ、押さえると痛む | +1点 |
扁桃に白いブツブツを伴った発赤ができる | +1点 |
咳は無い | +1点 |
15歳未満 | +1点 |
45歳以上 | +1点 |
合計点が4点以上の場合は溶連菌性咽頭炎を疑います。さらに鼻水がない、片側の喉が痛いなどの症状があれば、さらに疑いが強まります。溶連菌性咽頭炎の場合は抗菌薬で治療を行います。
扁桃周囲膿瘍・急性喉頭蓋炎
咽頭炎に関連する重大な疾患には、扁桃周囲膿瘍や急性喉頭蓋炎があります。
扁桃周囲膿瘍は扁桃炎が悪化して生じるもので、口の奥の両側の口蓋扁桃が細菌感染による炎症を引き起こし、膿が溜まった状態です。主に20~30歳代の男性に見られ、38℃以上の発熱や倦怠感などの全身症状が伴い、片側の喉に強い痛みが現れます。口を開けにくくなる「開口障害」が進行する可能性があるため、注意が必要です。また、Hot Potato Voiceと呼ばれる特有の声になることがあります。治療には外科的な処置が検討されることがあります。
急性喉頭蓋炎は、声帯上部の喉頭蓋に炎症が生じる疾患で、腫れると呼吸が難しくなります。唾を飲めなくなり、口を開けたままヨダレを垂らしたり、呼吸困難を緩和するための特有の体位(sniffing position)を取ることがあります。窒息の危険があるため、警戒が必要です。
伝染性単核球症
発熱、倦怠感、咽頭痛、頚部リンパ節腫脹、肝脾腫などの症状が現れる伝染性単核球症も比較的よくみられる疾患です。喉に白くベタっとした「白苔」が現れるのが特徴で、感染の原因はEBウイルスやサイトメガロウイルスです。
亜急性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎は喉の痛みを伴う見落とされやすい疾患です。30~40代の女性に多く見られる疾患で首の前側に位置する甲状腺に炎症が生じ、発熱や甲状腺の腫れや痛みが現れます。症状が現れる位置が時間と共に移動することがあり、甲状腺ホルモンの過剰分泌による倦怠感、動悸、多汗などの症状を伴うこともあります。通常は2~3か月で自然に治りますが、注意が必要です。
その他の病気
喉の症状で受診する場合、大動脈解離、心筋梗塞、くも膜下出血などの命に関わる重篤な疾患も注意が必要です。これらの病気は非典型的な症状を示すことがあり、早急な診察が重要です。また、胃食道逆流症や不安神経症も喉の違和感を引き起こすことがあります。
主に咳の症状がみられる場合
咳の症状が強く現れている場合は気管支炎や肺炎を疑います。
肺炎
肺炎が疑われる場合は胸部X線検査を行いますが、初期の場合や小さな肺炎は見逃されることがあります。高齢者や慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者様は細菌感染の可能性があるため、抗菌薬での治療が検討されます。ガタガタと震える悪寒や高熱、異常な寝汗などの症状がある場合は肺炎を疑い、速やかな治療が必要ですが、インフルエンザも悪寒・高熱を伴うため区別が重要です。
マイコプラズマ・百日咳
風邪の場合は数日で咳の症状は治まることが多いため、1~2週間以上咳が続く場合はマイコプラズマ感染症や百日咳などを疑います。
結核
結核もまだ多くみられる疾患です。長引く咳症状がある場合は、胸部X線検査を受けて原因を突き止めることが重要です。
心不全
心不全は心臓の機能低下により、全身の臓器への血液供給が不足する状態です。息切れ、動悸、むくみなどの症状がよくみられますが、横になると咳が出るといった風邪に似た症状が現れることもあります。
慢性的に咳が続いている場合
咳だけが慢性的に続いている場合は、後鼻漏・咳喘息・胃食道逆流症などの疾患を疑います。
いつもの風邪と
ちょっと違うかも…
と思ったらお早めに
ご相談ください
風邪のような症状には様々な疾患が隠れている可能性があります。いつもの風邪とは違うかも…と感じたらお早めに受診し、原因を確かめることが重要です。当院では経験豊富な医師が丁寧な診療を行っております。お気軽にご相談下さい。